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琉球ガラスとは?

   
   
琉球ガラス「ちゅら海セット」
   
  はいさい!「こんにちは」しまんちゅ工房店長のあらかきです。2005年のオープン以来、琉球ガラスを取り扱ってきました。改めて「琉球ガラス」とは何かを考えてみたいと思います。
   
   
 

【参考資料】

沖縄の伝統工芸品産業報告書

沖縄美術大全集

平良邦夫著 「ガラス」「沖縄の伝統工芸」

渡名喜明著 「桃原正男さんとガラス工芸」

   
   
 

目次

   
 

1.琉球ガラスとは?

2.琉球ガラスの歴史

3.琉球ガラスの作り方と技法

4.生産地表記の問題

5.琉球ガラスの種類

6.琉球ガラス体験

7.ずばり!琉球ガラスの魅力とは?

   
   
   
   
   
 
1.琉球ガラスとは?
   
   
   
   

しまんちゅ工房は、これまでもこれからも沖縄県産であり続けます。

  琉球ガラスとは、沖縄の自然と文化に根差し、沖縄で手作りされたガラス工芸品の事である。
「手作り」に限定するとトンボ玉も琉球ガラスという位置づけになりますが、当店ではそのように理解しています。
ただ、「沖縄」という場所と「手作り」については、きちんと限定したいと思います。
「4.生産地表記の問題」でも記載していますが、現在沖縄で流通しているガラスには「沖縄県産」以外の製品が
たくさんあります。戦後復興と共に発展してきた「琉球ガラス」は間違いなく沖縄を代表する工芸品になりつつ
あります。これからも当店では県産品だけを取り扱っていきます。
また「手作り」と謳われる作品の中には「電力」を必要とした製造ラインが増えている事を実感しています。
当店はこれからも、完全手作りのガラス製品だけを取り扱ってまいります。
   
   
   
   
   
   
 
2.琉球ガラスの歴史
   
   
 

 

   
首里城
   
 

■glass「ガラス」の伝来

   
  沖縄に初めてガラスが大陸、あるいは遠く離れた異国の地から伝来したのは、15世紀だと言われています。 15世紀というと沖縄は、尚巴志が統一した「琉球王国」があった時代でした。その頃に諸外国からビーズ状の
ガラスが輸入品として琉球王国へ入ってきたと考えられています。

また、17世紀から19世紀にはビーズ織りの宗教的装飾具が作られ、大正時代まで使用されていたことが
分かっています。

琉球王国として450年も大航海時代を生き抜いたのは、第二尚氏時代にノロ(巫女) という制度を設け、
中央で地方の精神的支柱であるノロをはじめユタなど、シャーマニズを統一する事によって精神的にも王国内を
まとめ上げたからだとも言われています。

その大切な儀式の際に、渡来したビーズ状のガラス玉を使用して装飾具を編み出していたのですから
沖縄では、17世紀にはガラスの価値を見出してたように思います。

   
   
   
 

■ガラス製造の始まり

   
  1,909年(明治42年)那覇市内に一時的に住んでいた鹿児島県出身である玉井商店主が出資し、ガラス工場を
設立したのが沖縄での最初のガラス製造とされている。

記述によると奥武山公園付近の「玉井ガラス」または「玉井硝子工場」とあり、定かではないが
当時務めていた職人は、沖縄出身ではなく本土出身が多く生活用品、産業用品といった実用品などを製造して
いたようだ。

具体的なモノとしては、薬瓶・菓子瓶、面白い所では、びん玉又はうき玉といって漁に使う中が空洞になった
ガラスの玉を制作していた。
その実用品たちは、もちろん、今のカラフルな琉球ガラスとは違い無色透明な色であった。

今とは違い、ガラス製品は生活や産業用品としての需要が多く、沖縄県内には昭和の初めまでにガラス製造を行う
会社が4社ほどあったようだ。これらの工場、会社は1930年には「前田硝子工場」一社のみになり、
1944年10月10日のアメリカ軍による空襲で焼失してしまった。

戦争で沖縄県産のガラス製品はほとんど残らなかったと言われています。

   
   
   
戦後すぐのガラス工房
   
 

■戦後の製造再開

   
  1,949年、戦争終了から4年後、前田硝子工場は、「沖縄ガラス工業所」と名前をかえて再興し、再び沖縄で
ガラス製造が開始される事になりました。終戦直後ですから資材はない状況での再興と再開は、大変な苦労が
あったと容易く想像できます。再開したガラス工場ではやはり、生活用品などの実用品を制作していました。

また1,951年に「奥原硝子製造所」と社名を変更したのち、1950年代後半から、このガラス工房から続々と
職人さんが巣立っていき、「牧港ガラス工房」「沖縄ガラス工場」を立ち上げていきます。
   
   
   
 

■本土復帰前のアメリカ統治時代

   
  沖縄は、1,945年の終戦から本土復帰の1,972年までアメリカの統治時代になります、それまでの県内向けの
実用品として製造されてきたガラスですが、アメリカ軍人やその家族から西洋風のデザインをもったガラスの
オーダーが増え、アメリカ本国へ帰る際のお土産として、さらにアメリカ本国への輸出も始まりました。
それまでの無色透明な実用品とはかわり、アメリカ人が好まれるカラフルな色と欧米のデザインを取り入れた
新しいガラス製品が次々と誕生していきました。

また、1,960年代には貿易や好景気が重なり、沖縄で制作されたガラス製品は、基地内やアメリカ本国への輸出
など売上を増価させていき「琉球硝子製作所」「なにわガラス工芸社」が新しく立ち上がり、
また民芸品店などでも沖縄で制作されたガラスは、「琉球ガラス」として取り扱われていきます。

ここだけのお話し、アメリカ統治時代に沖縄と本土を引き離すために、日本人ではなく「琉球人」としての
アイデンティティーを確立させたいアメリカの戦略があったように思います。

その為、沖縄には、「沖縄」がつく会社と同じくらい「琉球」と名の付く会社があり、琉球新報、琉球大学、
琉球銀行といったどれもアメリカ統治時代に会社が立ち上がります。

もしかするとそういった戦略から「沖縄ガラス」ではなく「琉球ガラス」として固定されていたった
気がします。

   
   
   
本土復帰闘争
   
 

■本土復帰と海洋博覧会

   
  僕が生まれる5年前に沖縄は、本土復帰しました。父の記憶では待ちに待った瞬間だったそうです。
琉球ガラスも大きな転換期を迎える事になります。それまでアメリカ向けに開発してきた商品とは別に、日本
向けのあらたな商品の開発が必要となりました。それにより、小皿・グラス・醤油さしなど日本の生活スタイル
にあった食器類が次々と誕生しました。また復帰前から民芸運動などの影響をうけ、付加価値をもった
琉球ガラスに、南国ならではと観光記念品としても注目されていきます。

また亜熱帯気候にあった色鮮やかな色彩は板ガラスなど建材分野への進出にも一役買い、新しい琉球ガラスの
スタイルをきづきました。

さらに1975年の沖縄海洋博覧会では沖縄観光ブームを更に加速させ、これに乗じて沖縄では、
「国際硝子工芸社」「親冨祖民芸ガラス」「琉球共栄ガラス工房」「ぎやまん館」「沖縄寿ガラス工芸社」
「オリエンタル商会」といったガラス工房が次々と誕生し、需要に生産が追い付かない程の盛況ぶりだった
ようです。

   
   
   
 

■琉球ガラス村の貢献

   
  戦後何も無かった時代からアメリカ統治時代、本土復帰と「奇跡」と呼ばれた沖縄の戦後復興と共に、
琉球ガラスは発展していったと思います。
しかし、1980年の初めオイルショックによる重油価格の高騰。また台湾からの類似商品の輸入などで競合
が激化し困難な時期が訪れました。
オイルショックと言えば、トイレットペーパーがなくなるという映像を思い出しますが、物価の上昇と金融の
しめつけなどで経済が停滞し、厳しい経営の時期に沖縄では、工房同士が協力して1983年に、組合が設立
され1985年に沖縄は南部に位置する「海の都」糸満市に、「琉球ガラス村」が設立されました。
共同で燃料と原料を購入して安定供給の実現に取り組んだ功績は非常に大きかったと思います。

また安定した雇用を確立する事で技能の向上や琉球ガラス職人の地位向上にも貢献し、現在の琉球ガラスの発展
に多大な功績を残しました。

   
   
   
現代の名工 桃原正男作 月桃花瓶
  当店が初めて琉球ガラスを仕入れる時、一番最初にご挨拶したのは桃原さんでした。皆さんから愛された名工でした。永遠に非売品として扱うなら
という事で譲って頂きました。いつも展示していますのでご覧になってください。月桃は桃原さんの代表作で名前通り月桃という沖縄では県民に
親しまれた植物から着色していますが、植物から着色するのはとても難しく、奇跡のように膨大な数の植物を試してようやくたどり着いた色です。
月桃の花は、沖縄では「うりずんの季節」と呼ばれて一年でもっとも過ごしやすい4・5月に咲きます。
   
   
   
 

■現代の名工誕生

  琉球ガラスは、沖縄工芸品の中でも歴史の浅い工芸品ですが、沖縄の戦後と共に発展してきた琉球ガラスは、
時代のニーズに合わせて様々な種類のガラス製品がうまれ沖縄独自のデザインが生まれてきました。
そして1990年に琉球ガラス村から大城考栄氏、1994年には宙吹きガラス工房虹から稲嶺盛吉氏、さらに
奥原硝子製造所から桃原正男氏が2001年に労働大臣表彰の「現代の名工」として表彰される事になりました。
また、沢山のお弟子さんたちが独立され伝統や様式に囚われない個性的なガラスが数多く生まれ1998年、
ついに琉球ガラスは沖縄県から「伝統工芸品」の認定を受けます。
2000年に開催された沖縄サミットでは、晩餐会に琉球ガラスのデカンタが使用され各国の首脳にプレゼント
されるなど世界的な場所でも扱われる存在になりました。

ただ、日本の伝統工芸品には認定されていないので今後の目標になると思います。

   
   
   
   
   
   
 
3.琉球ガラスの作り方と技法
   
   
材料の決定と調合→坩堝で溶解→成型(宙吹き法OR型吹き法)→徐冷→水洗い→検品
   
 

@材料の決定と調合

   
  琉球ガラスは、今でも再生ガラスにこだわっている工房もあれば、珪砂や石灰、ソーダ灰などを調合して色を自在
に選べるようになりました。
   
   
   
  溶解炉
   
 

A坩堝で溶解

   
  ガラスをとかす溶解炉の中に「るつぼ」と呼ばれる特殊な容器がありそこで約1300度の温度でガラスを溶かし
ていきます。また、一度1000度以上に熱を入れた坩堝は火を絶やす事が出来ません。一度でも冷ますと中の
ガラスが固まってしまいその坩堝は使用できなくなるからです。ガラスはとてもコストがかかるので最近では、
電気溶解炉が出てきています。
   
   
   
  琉球ガラスの工具・鉄はし
   
 

B成型

   
  坩堝から吹き棹の先端でドロドロに溶けたガラスをまいていきます。その後、鉄リンと呼ばれる金型で一度、
基本になる玉を作ります。次に宙吹き法、または型吹き法で吹き棹に息を吹き込みガラスを膨らませ、鉄のはしや、
工房独自の工具を使用しながら様さまなカタチを生み出していきます。
またその際に、色になる新しいガラスも取り入れ作業は、熟練された職人さんにしか出来ない工程にうつります。
しかもガラスが熱く解けた柔らかい状態での作業になりますので、ガラスが冷めるまでの限られた時間の中で、
精神を集中してガラスに魂を吹きこんでいきます。陶器とは違った時間との勝負が、ガラス職人さんを熟練の極み
へと高めてくれます。
   
   
   
 

C徐冷

   
  完成したガラスは、急激な温度変化で割れたり破損する恐れがあるので、徐冷窯という低熱窯でゆっくりと冷まして
いきます。初めての色の試みや初めてのデザインに挑戦した時、徐冷窯から出てくるガラスを見るのが職人さんの
一番の楽しみなのではないでしょうか?誰よりも制作した職人さんが一番先に作品を見る。
それは、いつも高温の窯の前、汗を流し極限まで集中力を高め時間との戦いのなかで作品を生み出しているから
徐冷窯があく瞬間は、そんな職人さんの為だけにあります。
   
   
   
 

D水洗い

   
  ひとつずつ丁寧にあらいます。実はこの時検品もかねています。手で分かるカタチや不具合など確かめながら
洗浄します。
   
   
   
琉球ガラスの波線丸グラス
   
 

E検品

   
  工房から作品として出す時にも検品、当店からお客様へお出しする梱包の際にも検品をしていますので、計3回の検品作業になります。
   
   
   
   
   
   
 
4.生産地表記の問題
   
  琉球ガラスもそうですが、シーサーを初め陶器や伝統工芸品と言われる作品も海外製品が多くなってきています。
その理由は圧倒的なコストの安さです。当店にも毎年のように中国のメーカーから仕入れの営業メールが来ますが
驚くほどの低コストの作品ばかりです。ただ、どれもが手作りである事は間違いありません。
ぜひ、その技術で独自のガラス文化を生み出してほしいと思います。
2007年、公正取引委員会から産地表示の徹底が命じられるなど改善がされていますが、食品とは違い、
価格に近い場所への表示がないなど、まだまだお客様が誤解をうけやすいのが実情です。
まさか「琉球ガラス」として購入したグラスが海外製品だとは予想も出来ないと思います。
当店は、沖縄の自然と文化があるからこそ生まれた「琉球ガラス」だと思いますので、これまでもこれからも
徹底して沖縄産である事を守っていきます。
   
   
   
   
   
   
 
5.琉球ガラスの種類
   
   
   
   
琉球ガラス「ちゅら海セット」
   
  種類と言いましても現在の琉球ガラス工房から生み出された作品は、本当に沢山あります。コップやお皿などの
日用品は勿論、ランプや置物といったインテリア、そしてアクセサリーまで全てのジャンルに琉球ガラスとして
生まれてきていますが、個人的には板ガラスのような建築材がまだ改良の余地があるように思うのと、
ぜひ!クリスタルといった違う材料での琉球ガラスも生みだしていきたいです。

また琉球ガラスを代表とするデザインは二つあるように思います。一つは気泡をデザイン化した作品。もう一つは
アイスクラックといいまして、ガラスがまだ高温の状態の時に急に冷やす事でグラスにヒビを入れ、更に熱を加え
ヒビを溶かす事で水漏れを防ぎデザイン化する技法ですが、キラキラした琉球ガラスは南国の沖縄にとても合った
デザインの一つだと思います。また泡盛文化が沖縄でヒビが入ったグラスは、清涼感がまし常夏の島で涼しさを
与えてくれる作品として県民にも愛されたデザインです。
   
   
   
   
   
   
 
6.琉球ガラス体験
   
   
   
OKINAWA琉球ガラス体験マップ
  琉球ガラスは観光と共に伸びてきて最近は「ガラス体験」がとても人気があります(^^)度の記念に職人さんと
一緒につくるマイグラスは、とても好評で各工房のオリジナルのメニューがあって当店がオススメする体験が出来る
ガラス工房さんをご紹介します!

※現在コロナの影響で体験を中止している工房さんや、日によって変わりますのでリンク先でご確認下さいませ
   
   
   
   
   
 
7.ずばり!琉球ガラスの魅力とは?
   
   
   
   
琉球ガラス制作風景
   
  やっぱり!琉球ガラスの一番の魅力は沖縄を感じられる事だと思います!

それから陶器にはない清涼感も魅力の一つで、夏を涼し気に味わせてくれる琉球ガラス。

また透明感のあるガラスは「光」の美しさを感じる事ができます。

普段、太陽の光を意識する事はありませんが、ガラスを通して「光」のコントラストを視覚化できるのも陶器や漆器
にはない魅力の一つです。

また製造工程にも非常に魅力的な面があります。それは高温のガラスを冷めないうちに成型していくのは、他の
工芸品には見られない時間との戦いで培った高度な熟練された技があります。

体験してわかりますが、ガラスは生きているようでそれを匠に扱うのは至難の業だとわかります。

そして高温の窯の前で制作する。ひとつひとつ丁寧に、製造過程において電力や機会を使わない本当の手作り工芸。

ぜひ、当店がお届けする作品を手に取ってください。きっと「島風」を感じる事が出来ると思います。

最後に、琉球ガラスの一番の魅力は、高温の窯に負けない職人さんの熱くて強い信念だと思います。

いつも最高の作品を制作して頂いて、この場をかりて心から感謝申し上げます。

しまんちゅ工房 店長新垣信人

   
   
   
   
   
   
 
 
 
           
           
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